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さて今回は日蓮正宗の旧信徒、伝統講の方々の信仰形式についてです。
日蓮正宗・大石寺の信徒組織の全体は本来「法華講連合会」と呼ばれます。これは「講」と呼ばれる複数の信徒組織の緩やかな連合体のようなものです。いわゆる「法華講」とされるものも所属する寺院によって異なる特徴があります。また「妙観講」等、独自の名所を持つ組織もあります。かつては創価学会や顕正会(旧妙信講)もこの大石寺の講組織の一つだったのです。
ところで、これら多くの講組織と別に法華講には「伝統講」「旧信徒」と呼ばれる人たちが存在します。多くの講組織は昭和期の創価学会からの教義の侵食を受けましたが、このブログでも何度か取り上げていますように旧信徒たちは本来の日蓮正宗の教義を保っている人たちです。彼らは神社にも参拝しますし、曼荼羅本尊の奉安様式も現在の多くの法華講信徒と異なり、一体一仏式で祀ります。そしてなぜか法華講連合会の役員人事等ではこれら「旧信徒」たちが優遇される傾向さえあります。つまり日蓮正宗信徒組織の内部では創価学会出現以前と以後とで教義のダブルスタンダードが起こっているのです。
「神社建立・本尊奉納は大石寺の本来の教義」
「大石寺伝統講・旧信徒さんについて」
「本尊の奉安様式」
「「棟札本尊」について」
「登山会のこと」
「南無天照八幡等諸仏」
実は旧信徒たちの中には曼荼羅本尊を複数体、人によっては数十体以上もの曼荼羅本尊を家庭に保管していることがあります。これは創価学会や現在の多くの新参法華講の信徒家庭ではあり得ないことです。このことは多く指摘されていまして、松岡幹夫氏の実態調査によれば複数体の曼荼羅が巻かれて保存されていたり、何体もの曼荼羅を虫干しの日にまとめて広げたりする旧信徒の実態が明らかにされています。以下の画像は松岡幹夫『日蓮正宗の神話』(論創社、2006年)からの転載です(332〜333ページ)。
さて今回の読者からの史料提供は静岡県の県史民俗調査報告書によるものです。これによりますと、静岡県沼津市井出地区に伝わる「お題目の民間信仰」という記述があり、大石寺信徒と身延山信徒が座敷に講中のそれぞれの宗派の曼荼羅を掲げて題目を唱える「十二日講」という風習が現代まで続いていたことがわかっています。
このように日蓮正宗の旧信徒・伝統講の家庭は、現在の法華講や創価学会のように一体一幅のみの曼荼羅を奉る本尊奉安様式はとってはいなかったのです。また現在の創価学会や法華講信徒は各家庭に一体のみの曼荼羅本尊を提げる形式をとりますが、旧信徒はそんなことをせず、複数体の曼荼羅本尊を巻いて保管・所有し、身延山と合同の「十二日講」にも一緒に参加して身延山信徒と題目も唱えていたと言うことになります。
参考文献