いつもみなさん、ありがとうございます。
このことに関しては以前にも何度か書いているところです。
「導師曼荼羅について」
「『導師本尊』と『未来本尊』」
導師本尊は日蓮正宗の葬儀の際に奉掲されるもので、本尊左右両肩には「毎時作是念以何令衆生」「得入無上道速成就仏身」と書かれ、また本尊下部中央、ちょうど日蓮の左右の「天照大神」「八幡大菩薩」の書かれる位置に「五道冥官」「閻魔法王」と書かれています。
日蓮真蹟本尊にはこのように書かれた本尊は存在しません。また日蓮が亡くなる時に提げられた本尊は「臨滅度時本尊」ですが、その相貌は当然のことながら導師本尊とは全く違います。また奇妙なことですが、日蓮正宗の葬儀で導師本尊を提げる場合、葬儀の導師は本尊を背にして、棺に向かって読経唱題をする形になります。
具体的に引用してみましょう。以下の画像は平楽寺版『日蓮聖人遺文全集』上巻収録の『授職灌頂口伝抄』で、同1039ページのものです。
『授職灌頂口伝抄』は録外が初出で、中山系の本成房日実の『宗旨名目』(寛正2年、1461年)にその名前が出てきますから、日蓮滅後180年後に出てきた文献であり、成立はほぼ室町時代、室町幕府の8代将軍足利義政の時代にあたります。
とするならば、日蓮正宗は「導師本尊」の教義を作った際、ほぼ偽書とされる『授職灌頂口伝抄』の文から勝手に本尊に「五道冥官」「閻魔法王」と書き、それを勝手に「大石寺の相伝」と偽ったことになろうかと思います。もしそれが大石寺唯一の相伝なのであれば、なぜ室町時代に中山門流の日実が『授職灌頂口伝抄』を知っていたのかということが不自然になるでしょう。あるいは大石寺の相伝というものが当時からさほど秘匿もされず、中山等の他門流に容易に知られるようなものに過ぎなかったことになります。