いつもみなさん、ありがとうございます。
さて今回は、本尊の相貌で、「天親菩薩」の扱いについてです。
実はこの「天親菩薩」は大石寺所伝、日興書写本尊の「御座替本尊」には書かれています。
ところが、この「御座替本尊」に書かれている「天親菩薩」、戒壇本尊には全く書かれていないのです。
気になって調べてみたのですが、日蓮の真筆本尊で「天親菩薩」が書かれた例はあまりありません。123体の日蓮真蹟曼荼羅を眺めてみたのですが、「天親菩薩」が書かれているのを確認できたのは以下の3体のみでした。
No.13、文永11年7月25日、茂原藻原寺蔵
No.53、弘安元年8月日、日頂授与本尊、清水市海長寺蔵
No.54、弘安元年8月日、京都本能寺蔵
推察するに、日興は多くの日蓮の本尊書写の書法を知悉しており、それらを参考にしながら独自に御座替本尊を書き、それを日目に相伝したことになります。その時に戒壇本尊は参考にしていないのです。そもそも『御本尊七箇相承』には「見へ給ひつる処の本尊の御形なりしをば能く能く似せ奉るなり」と書かれています。『七箇相承』がもし仮に真蹟と仮定するなら「能く能く似せ」て書かなければならない筈です。