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さて最近、自公政権の関係がギクシャクしている印象を受けます。元々は衆議院小選挙区定数の「10増10減」に伴う候補者調整を巡って、新設された「東京28区」(練馬区東部)へ独自候補擁立を自民党も公明党も譲らなかった問題です。こじれた後、公明党は5月24日、東京28区候補者調整に対する自民党の回答を受け入れられないとして、東京都内の全ての選挙区で自民党候補を推薦しないことを決めました。
このことに関連して、2023年5月27日の毎日新聞5面に「自公細るパイプ」と称する記事を読みました。今回は単にその新聞記事を要約して書いてみます。
「「ここまで自公がこじれたことは今まで一度もない。収束の道が見えないまま対立している。それをちゃんとやるのが政治のイロハだが……」。公明幹部は、かつては水面下で調整していた選挙協力を巡る問題が表面化し、自公が衝突する現状をこう嘆いた。
指摘されるのが、水面下の交渉を担ってきたベテラン議員の不在だ。公明側では、太田昭宏前代表や井上義久元幹事長が2021年に立候補せずに引退した影響が大きい。両氏は公明の支持母体・創価学会の出身で、学会と自民の双方に顔が利く存在として、自公連立の「潤滑油」の役割を担った。
一方、山口那津男代表や石井啓一幹事長は、学会に対する発言力が弱いとされる。「政治家として、時には学会の意見をはねつけることも必要だ。今は学会の言いなりで、ただの『メッセンジャー』になっている」。公明関係者は自公の対立が深まる原因をこう指摘する。
パイプの弱体化は自民側でも深刻だ。太田氏と気脈を通じた安倍晋三元首相は銃撃事件で死去し、国会運営で公明と連携を深めた大島理森前衆院議長も政界を引退した。学会幹部との太いパイプを誇った菅義偉前首相は岸田政権で非主流派に甘んじている。
公明との関係が稀薄なのは官邸も同じだ。公明幹部は「岸田内閣になる前は裏から官邸にこっそり入って、ときの首相と関係を築いていた」と指摘する。
両党の幹事長、国対委員長が週1回、都内のホテルや国会内で会談する「二幹二国」は形骸化が指摘されている。両党間の懸案を処理するため、第2次安倍政権や菅前政権では1時間を超えることも多かったが、岸田政権になってからは30分程度で終わることも少なくない。
岸田政権から距離を置く自民の閣僚経験者は「二幹二国がわずか30分で終わるのは異常事態だ。平時に取れていないコミュニケーションが有事に取れるわけがない」と突き放した。」
【竹内望、畠山嵩】
(毎日新聞5面、2023年5月27日付)
創価学会の組織内の集票力の低下も背景にあるかと思いますが、公明党の石井啓一幹事長が「東京における自公の信頼関係は地に落ちた」とまで言い切るのは、流石に創価学会内の危機意識の表れでしょう。これを最終決定とするのは、ここで選挙区確定をしないなら、創価学会内部の選挙戦の方向性を創価学会に出せないからでしょう。元活動家としてはよくわかります。これで選挙区確定しないまま早期解散なら、創価学会信徒の負担は大変なものになります。つまり石井啓一氏は創価学会のメッセンジャーとして発信していることが伝わってくるんですね。
それで公明党は10増10減の選挙区割りから、東京28区からの擁立を図った。ところが10減で地方から議員が減るのは自民党なのであって「そんな簡単に選挙区を渡せない」というところも自民党にはあったと。そんな齟齬が両党の選挙協力に影を投げかけているのでしょう。
ただ今回の件は、公明党が東京への自民党への選挙協力をしないということを喧伝することで、早期の衆議院解散解散・総選挙にブレーキをかけようとした可能性も高く、おそらくその意味で、これらの公明党の作戦は奏効している印象を受けます。