いつもみなさん、ありがとうございます。
さて今回は小説『人間革命』の改竄についてです。
具体的には旧『人間革命』(全12巻)の第11巻で、描かれていた正木永安(本名:貞永昌靖、渡米してジョージ・M・ウィリアムズと改名)の渡米のシーンが、聖教ワイド文庫版では4ページ余り、彼のエピソードが全てカットされています。
具体的に言いますと、旧聖教文庫版(1992年版)の第11巻の「波瀾」の章、116〜121ページまでの部分で、聖教ワイド文庫版(聖教ワイド文庫版、2013年第2版)での125ページの部分です。両方の版をお持ちの方はぜひ見比べて頂きたいと思います。
貞永昌靖(ジョージ・ウィリアムズ)さんと言えば、90年代に活動されていた創価学会員の方なら多くの方がご存知のことでしょう。もとアメリカSGIの理事長であり、苦労の末に渡米して、一粒種として信仰に励んできたアメリカ創価学会の功労者です。ご記憶の方も多いかと思います。
確かに彼が創価学会から退会されたことは事実ですが、彼のエピソード全てを聖教ワイド文庫版でカットするというのは、あまりにあからさまな改竄であると私には思えます。
カットされたエピソードの中で、正木永安(貞永昌靖)が渡米する直前に父が病に倒れたこと、それを乗り越えて渡米し、やがて父が亡くなること、そしてその葬儀に山本伸一(池田大作)が夫妻で参列し、彼に激励の手紙を送ったことが綴られています。
宗教的な使命感と誇りを抱いて、若き貞永昌靖氏が病床に倒れた父を後にして渡米。そして父が亡くなったことを知らされ三日三晩泣き続けたことも描かれています。そしてその悲哀に対して池田大作氏が夫妻で葬儀に参列し、貞永氏に手紙を送ります。「使命に生きる君らしく、いかなる悲しみや苦難をも乗り越えて」(旧聖教文庫版、120ページ)と池田氏に励まされ、彼はどれほど心が癒えたことでしょう。
そのエピソードを無残にカット。彼の渡米の決意や悲哀はもはやどうでもよいのでしょうか。
こういうところに、創価学会や大石寺系教団の歴史を大切にしない冷酷さを感じますし、また教団からすれば、彼のような宗教的な使命感や誇りといったものは、教団側の都合で史実から消されるような「取るに足らない」ものなのかもしれません。