気楽に語ろう☆ 創価学会非活のブログ☆

創価学会の元非活メンバー(現在は退会済み)による語り

御書辞典のこと。




いつもみなさん、ありがとうございます。



さて、創価学会聖教新聞社の刊行物は、今はほとんどが面白くも何ともないのですが、かつては『富士宗学要集』等、教学研鑽に非常に重宝するものがありました。



その中で、今でもブログ執筆の際、個人的に意外と役立っている本が一つあります。
それは昭和51年発刊、創価学会教学部編著の『日蓮大聖人御書辞典』です。

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この『日蓮大聖人御書辞典』が出版されることになった経緯が、この辞典の序文や後記に詳しく書いてありますので、今回紹介してみましょう。



もともとこれを作ろうとしたのは、創価学会の関西方面の教学部でした。具体化の動きが始まったのは、昭和48年(1973年)6月のことです。
元関西長の柳原延行氏は後記で「御書全集に自ら取り組んでいくための補助として仏教用語の辞典が求められるに至った」と述べ、こうした状況の下、この辞典は御書全集の仏教用語をわかりやすく解説することを第一義に執筆・編纂が始まったそうです。



同年7月、創価学会関西学生部員を中心として編纂委員会が設置され、作業が始まります。
最初は用語・語句の選定と収集で、当時既刊の『仏教哲学大辞典』と『教学小辞典』から用語や語句を一つ一つカードに書き出していくという、気の遠くなるような作業から始まります。
関西の創価学会教授の代表約2500人が第1次原稿の執筆に取り掛かり、その後延べ300人の教学陣が編纂委員となります。各委員会は仏教用語、仏教哲学、歴史、一般哲学、社会科学、自然科学、心理学の部門別に編成され、各部門は10〜15人で構成されたと言われています。
昭和48年末には約7000項目の1次原稿が完成します。



ここから各部門で、多くの人が納得するためには客観的な記述が必要であると判断し、大幅に加筆修正を加えることになります。この加筆修正を担当したのが、昭和49年3月に編成された学生部を中心とする「編纂チェック委員会」でした。執筆にあたり、歴史書や大正新修大蔵経の原典にまできちんと遡って厳密に語句の元意を検討し、平易な現代語に置き換え、更に仏教用語に関しては日蓮教学からの再検討も行っています。この編纂チェック委員会は仏教用語、天台教学、歴史、一般用語の4部門に分かれ、膨大な資料を前にして悪戦苦闘の連続、更には語句の解釈に多くの異論が噴出し、夜遅くまで討論が交わされたと言います。加えて史実の考証のために文献調査に伴って現地に赴いての実地調査や問い合わせ確認までなされています。



並行して女子部学生局のメンバーによる執筆完了原稿の清書作業が行われていきます。当初の構想は総合的な仏教辞典のようなものを予定していたようですが、「御書を読むための手頃な辞典を」との要望に応える形で「日蓮大聖人御書辞典」として大幅な項目の補充を行います。このため、項目数は2倍にも増え、引き続き執筆作業が進められます。
このような関西創価学会の熱意に打たれる形で、原島嵩氏を中心とする東京の創価学会教学部が何度となく来阪をし、語句の意味の検討がなされました。



昭和50年(1975年)7月、遂に1万2000項目の原稿が完成、初校のゲラが刷り上がると、東京の教学部による最後の検討が加えられます。その結果、辞典の趣旨の充実のため更に約4000項目を追加することになり、新メンバーも加えて執筆が続行されます。そして3年余りの月日を費やし、昭和51年(1976年)11月18日に、この『日蓮大聖人御書辞典』は上梓する運びとなります。



凡例を見ると参考文献にきちんと大蔵経や他宗派の文献、原典にもきちんとあたっており、執筆に客観性と歴史的考証を重視した跡が窺えます。

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これらは関西という方面の有志から起こった教学の一つの運動とも言うべき事象でしょう。
では果たして現在の創価学会にこれだけのことをやろうとする気概があるのかどうかと問うなら、私は全く望めないと思います。またこのような教学運動を方面組織の有志で行おうものなら、上の幹部や信濃町本部が止めることでしょう。創価学会はこのような教学の追求をもはややめてしまったのであり、現在の活動家たちは教学の重要性も知らず、信濃町に従順で何も知らない人たちになってしまったのだと思います。



そんな経緯で発刊された当御書辞典ですが、今、読んでも客観的な考証に耐え得る記述もありますし、特に日蓮の御書を読むだけならばわからない語句をすぐに引ける利点は大きいでしょう。と同時に当時の教学陣の熱意を感じる一冊であり、私としてはかなり重宝しているところです。『仏教哲学大辞典』などより比較的ハンディで使いやすいんですね。
この『日蓮大聖人御書辞典』、すでに聖教新聞社からは絶版となり発刊されていませんが、ヤフオク等、ネットで古書がかなり出回っていまして、さほど高くない値段で購入することができます。日蓮正宗の偽作教義に染まっている部分ももちろんあるので全面的に信用し得るものではありませんが、純粋に御書の研鑽を考える方なら買っておいても損はないかと思います。